2013.9.24 tue.

 

学校給食の単独校調理場への民間委託の拡大について反対討論

 

日本共産党 赤星ゆかり

 

 ただいま議題となっております、議案第109号平成25年度富山市一般会計補正予算中、債務負担行為の補正のうち、富山市立蜷川小学校、呉羽小学校、大沢野小学校の学校給食の単独校調理場、学校の中の給食室の調理・洗浄業務を、今年度の3校に続き、民間委託しようとする件について、日本共産党の反対討論を行います。

 

 子どもたちのこと、いちばん大切です。保護者の働き方や生活スタイルの変化や多様化にともない、子どもたちの食生活や生活規律が乱れてきている、と、教育関係者からも指摘されています。家庭での一から手作りの手間暇かけた料理が減り、ファストフードや冷凍食品に頼ることの多い時代だからこそ、学校給食の果たす役割は、ますます重要になっています。

 

 単純に、「直営だから」「民間だから」という問題ではありません。私は、議案の調査から、わかったことを報告しながら、討論いたします。

 

まず1点目は、学校給食としての「質」に関わる問題です。

(1)「焦がしてしまうことが度々あった」

 市教育委員会が、今年度から民間委託した3校で、「検証」を行なった報告書の中で、1校で「焦がしてしまうことが度々あった」ということが、学校から報告されています。学校に行き、お聞きしたところ、「調理場にはクセがあり、この学校の釜は焦げやすい。その後、だんだん慣れて来た」とのことでした。

 

 一方、このことについて、直営校の正規職員調理員の方にインタビューしたところ、子どもに不完全なものを出すわけにはいかない「たとえ焦げやすい釜であっても、慣れるまでは、経験ある人にポジションを替わってもらい、焦がさないようにした」「毎日が真剣勝負です」という回答でした。

 

(2)また、民間委託校で、児童生徒から、給食の食材の「大きさが適切でない」「食べにくい」の回答が多くあったことについて、

「はじめの頃、野菜の切り方が大きかった」

「調査結果を聞いてからは、幼稚園に合わせて、小さめに切るようにしている」とのことでした。

 前日に調理責任者との打合せはしますが、栄養教諭または栄養職員など市の職員が、直接、調理場に入って目の前の調理従業員に指示することは、労働者派遣法に抵触する「偽装請負」の恐れがあり、できないことになっています。

 

 このことについて直営校では、

「出来上がってから『野菜が大きすぎる』」ということでは困ります」と、

栄養士が調理場に入り、指示したり、いっしょにつくることもできる。大きな違いの部分です。

 

(3)安定した給食の提供

 さらに、直営校では、

 正規職員が順番に、毎回調理の担当ポジションを換えて、できるだけたくさんのメニューに当たるようにして、「だれが作っても同じようにできるようにしている」とことのです。

 

 子どもたちに毎回、完全な安定した給食を提供する、ということも、だいじな学校給食のの部分ではないでしょうか。

 

(4)作る人の顔の見える給食

 そして、民間委託校では、

 給食を作っている従業員は、企業の採用であり、学校に仮の出勤簿はあるが、名前以外、住所やどんな人なのかは、基本的には学校にはわかりません。

 正規社員とパート・アルバイト従業員の内訳も、「法人情報であり、企業の競争上の地位が損なわれる恐れがある」という理由で、非公開扱いです。

 一方、直営の場合、

 校長が、所属長として、調理員の服務監督責任者であり、一人一人と日常的に、氏名、住所、ある程度、家庭のことなども含め、どのような人なのかを把握しています。

 まさに、「つくる人の顔が見える給食」が、大切なのではないでしょうか。

 

 学校は、先生方、調理員、用務員ら教職員一丸となって、保護者や地域住民と協力し、子どもたちを教育する現場です。その中の給食室だけが、「企業の競争原理で」情報公開されない異質の空間になるのです。

 

 統一献立で、食材も同じだから、「給食の質に変わりはない」という説明でした。しかし、これらのことを、しっかり考えていただきたいのです。

 

 2点目に、この民間委託のそもそもは、市の「行政改革」「定員適正化計画」に基づく正規職員の削減にあります。

 2005(H17)年4月1日と、今年2013(H25)年4月1日の比較で、

正規職員が、累計で515人(11.3%)削減されたうち、

 給食調理員は、231人から139人へと、92人(39.8%)約4割も少なくなっていることがわかりました。

  

 このことで、「現在、正規職員が足りない状況が起きている」「これ以上、臨時職員が増えていくとなると、やはり学校の給食現場がまわらなくなってくることが心配される」と、教育委員会自身、これまで答弁されてきました。

 加えて、調理員で26歳~30歳は5人、22歳~25歳が1人しかいません。このままでは、これまでの努力で築き上げられてきた学校給食の技術の継承が難しくなっていきます。

 

 このような状態になっていても、正規職員の採用をせず、民間委託でなんとかしようという発想では、子どもの最善の利益につながりません。

 

 「5年間で15校」という、職員数削減ありきの基本方針を凍結し、民間委託をストップして、子どもたちの食を支えるのに必要な職員確保こそ、早急にはかるべきです。

 

 3点目に、災害時の対応です。

 最初の民間委託の3校の時は、「『ある程度の正規職員は、災害時に備えて一定の直営力は必要だ』と市長も本会議で答弁されており」「当面のところ、中学校は災害があったときでも避難所にならないでしょうし、他に困っている現場が出てきているので、今、民間委託をするとすれば、中学校がやりやすいのではないかということで、この3校に決まった」と説明されました。

 ところが今回は、3校とも、地域住民の災害時の避難所になる小学校です。

このことについても、理解できません。

 

 4点目に、昨年、最初の3校は、「3年間で約4300万円の経費削減」と説明され、実際の契約金額では3校分の今年度1年分で約1900万円の削減ということでした。

 今回は「3校の3年間で1500万円」とのことです。この大きな違いもわかりませんが、なによりも、3校で年間500万円の人件費削減を優先して、子どもの食を支える正規職員を採用しない、ということに納得がいきません。

 

 5点目に、入札参加できる今年度の登録企業は、本社が東京7社・大阪2社・名古屋2社です。委託費として富山市が支払ったお金が、働く人の人件費分だけではなく、大都市の本社の利益として吸い上げられ、地域経済に税金を循環させるという観点からも問題です。

 

 これらのことから、私たちは、じゅうぶん議論・検討した結果、日本共産党としては、反対すべきとの結論に至りました。

 ぜひ議員諸氏のみなさんも、熟慮のうえ、ごいっしょに反対してくださるよう呼びかけて、討論を終わります。